イオンメイト九州・沖縄 2020年9・10月号Vol.12

イオンメイト in 九州・沖縄 2020年9・10月号 vol.12


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マックスバリュ地元味めぐり出世魚の中に酢飯を詰めるハレの席の豪快な郷土料理このしろ姿寿司【熊本】9育って出世しても、武士には嫌われた?ニシン科ニシン目の魚、このしろはブリ同様、成長と共に呼び名が変わる「出世魚」です。幼魚は「しんこ」と呼ばれ、江戸前の高級寿司のネタになります。また、小さい若魚の「こはだ」も寿司ネタとしてポピュラーです。若魚「ながつみ」を経て、センチを超えると「このしろ」16と呼ばれる成魚になります。名前の由来はその昔、大漁時に雑魚扱いされ、「飯の代わりの魚」という意味で「飯代魚(このしろ)」と呼ばれたという説があります。しかし、江戸の武士はこのしろを好まなかったとか。「このしろ」は「この城」に通じ、このしろを焼く、食べるのは「この城を焼く」「この城を食べる」に聞こえるためです。また、料理の際に腹開きするため、「腹切魚」として武士には縁起が悪いものでした。遂には幕府が武士にこのしろを食べるのを禁止したほど。今でも東京あたりではなじみが薄いようです。頭も骨も酢で柔らか丸ごと1尾を豪快に!このしろは江戸の武士には嫌われても、九州では比較的食されてきました。特に島原湾から天草灘にかけた天草地方、八代海に面した沿岸地域で好まれて1月中旬から1月います。旬は1にかけて。この季節に祝い事や宴席があると、地元ではこぞって「このしろの姿寿司」を出します。師走や正月の郷土料理にもなっています。この姿寿司は甘酢で締めたこのしろの腹に酢飯を詰め、形を整えたもの。このしろは成魚だけに骨が固くなっています。それを酢の力で骨はもちろん、頭も柔らかくします。開き方は家庭や地域によって背開き、腹開きと分かれるようですが、その日に獲れたものを使い、冷凍のものは使わないのがコツ。


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