イオンメイト in 九州・沖縄 2022年9・10月号 vol.24

イオンメイト in 九州・沖縄 2022年9・10月号 vol.24


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九州味めぐり接待料理からソウルフードの家庭料理に鶏飯【鹿児島】具がたっぷり乗ったスープ茶づけ風料理厳格な薩摩役人の心をほぐす接待料理11以前、「かしわめしおにぎり」でもご紹介したように、九州は鶏肉料理文化圏です。佐賀・長崎を除く各県が鶏肉消費量の全国トップテンに入るほど。それぞれの地域に鶏肉を使った郷土料理があり、鹿児島県奄美大島の「鶏飯」もその一つ。「鶏飯」と書いて「けいはん」と呼び、鶏肉を混ぜて炊いた鶏飯ではなく、一見すると具沢山のスープ茶づけといった感じです。具は茹でた鶏肉をほぐしたものをメインに、干し椎茸、錦糸卵、パパイヤの漬物、みかんの皮、刻み海苔やネギなど。それぞれを好みの量でご飯に載せ、これに鶏ガラ、あるいは丸鶏で丁寧に作ったスープをかけて食べるのです。コクの深いスープとそれぞれの具の味を楽しみつつ、さらさらとかきこめる。それでいてボリュームもしっかり。素朴でもあり、なんだかほっとするような食後感があります。そして、そのほっとするような気持ちこそ、鶏飯の歴史背景があるのです。鶏飯が生まれたのは、奄美大島が薩摩藩の支配下に置かれていた江戸時代。年貢の黒糖づくりが厳しく課せられ、鹿児島本土から来た薩摩役人の威圧的な態度に島民は委縮していました。そんな役人たちをもてなし、少しでも和らげようと、差し出されたのが鶏飯でした。実は鶏肉は島民にとって非常に貴重な食糧。それを余すところなく使い、接待に出すことで薩摩役人のご機嫌を取りなしたのです。ただし、当時は茶づけ風ではなく、炊き込みご飯風の鶏肉料理だったそうです。それではいつから鶏ガラスープをかけるようになったのでしょう。時は移って戦後間もない昭和年、開業間もないある旅館が鶏ガラスープをかける鶏飯を提供しました。館主は「ふるさと料理復活の研究」に打ち込み、江戸時代の鶏飯に新たなアレンジを加えたのでした。以来、この鶏飯が定着し、郷土料理として親しまれるようになったのです。さらに、現在の21


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